コラム

未払い賃金のリスク解説


[令和2年は69億8614万円]
[令和元年は98億4068万円]
[平成30年は124億4883万円]
[平成29年は446億4,195万円]
[平成28年は127億2327万円]
これは労働基準監督署により、会社から労働者へ支払いを命じられた金額です。

はじめまして、クラフト社会保険労務士事務所、代表の社会保険労務士のコグチと申します。
今回は未払い賃金のリスクについて解説させてもらいます。

近年、労働者の権利意識の芽生えから、未払い賃金請求が非常に多く発生しています。
未払い賃金とは具体的になにを指すのかというと
定期賃金、割増賃金、有給休暇中の賃金、休業手当、賞与・ボーナス、退職金などのうち支払いが完遂されていない賃金を指します。
そしてこの中で昨今トラブルが多くなっているのが、時間外労働による割増賃金についてのトラブルが多くなっています。
この未払い賃金というのは、甘く見ていると非常に危険な経営リスクとなりえます。

想像してみてください・・・
毎月毎月給料を支払っているはずの従業員さんから突然1か月以内に過去3年分の未払い賃金を数百万単位で請求されたらどうしますか?
あるいは一人の従業員さんだけでなく、集団でまとめて数千万単位で請求されたら、どうしますか?
体力のある企業は持ち堪えると思いますが、その後の資金繰りに大きな影響を及ぼすと思います。
未払い賃金なんて、よっぽど悪質でなければ、請求なんてされないでしょう。
ウチの会社は大丈夫だ。大方の企業様はそう思うと思います。
しかし、これが今非常に身近なものとなっているんです。

改めて説明させていただきますが、これは、労働基準監督が定期・臨時に事業所に立ち入り調査を行い、監督指導の結果、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上である事案をまとめたものです。

まずは直近のデータからみていきましょう。
実はここ数年はコロナウィルスの影響もあり、この是正指導による金額は減っています。
[令和2年は69億8614万円]
[令和元年は98億4068万円]となっています。
しかし、コロナショック以前、経済活動が活発だった年では
[平成30年は124億4883万円]
[平成29年は446億4,195万円]
[平成28年は127億2327万円]という数字になっています。

特に注目して欲しいのはコロナショック突入前の平成29年のデータの446億円という数字のインパクトです。
この年度は労基署が随分力を入れたようで、対象労働者が前年比約11万増の20万5000人が対象となったこともあり、突出した数字となっています。
そして勘違いして欲しくないのですが、これはあくまで厚生労働省発表の是正指導の結果支払いを100万以上の支払い命じられた事案のまとめであり、100万円以下の事案や、労働者が個人で弁護士に依頼をして未払い賃金請求を行うといった民事紛争の事案は入っていません。
なので、実際の未払い賃金の総額に関していうと、これらの額よりも多いものとなります。
今後コロナが収まり、経営活動が以前のように戻った場合、未払い賃金請求の件数及び額もまた増加に転じていくと思われます。
また、未払い賃金の事案について裁判などで争われた場合に不払いと認められると、不払いと認定された額だけでなく、制裁金として付加金というものが課せられる場合があります。
この付加金というのが、最大で当該未払い金と同一の額を労働者に支払う義務が発生します。
つまり、労働者が200万円の未払い賃金を請求してきて、会社側が裁判で敗訴をすると、裁判所から400万円の支払い命令が行われる場合があるということです。
もっともこの付加金についてはよほどの悪質性がなければ支払い命令はされないケースとなっています。
それともう一つ、未払い賃金については、以前は消滅時効が2年となっていて、さかのぼっても過去2年分の賃金しか請求されなかったのですが、2020年4月から消滅3年に改正され、最終的には5年にまで延長されるということになっています。
5年に延長されるということは、単純に年間100万円の未払い賃金があった場合、500万円の請求されるようになってしまうということです。
また最近の傾向としては、以前はこの未払い賃金請求は退職時に請求されるケースが殆どでしたが、近年は退職する予定のない労働者が会社に勤めた状態で請求をし、請求後も会社に居続けるというケースも増えているようです。

では具体的にどういった企業が高くなっているのか、その特徴を紹介致します。
①労働者の労働時間管理がどんぶり勘定な企業。
②給料計算を自社で行っているうち、専門家のコンサルティングを受けたことのない企業。
③固定残業代制度・みなし労働制等を導入している企業となります。
詳しく説明していきます

1つ目のどんぶり勘定な労働時間とは、例えば勤怠管理を時間で管理しておらず、一日ごとの出面で管理している場合や、時間外労働をおおよその感覚で把握している場合を指します。
原則として労働時間は1分単位で管理しなければいけないとされています。
なので、どんぶり勘定だと1日単位ならば大した労働時間にならなくとも、チリも積もれば山となるで、年単位で未払いが溜まってしまうと、思わぬ時間が積み重なってしまう場合があります。
2つ目の給料計算を自社で行っているうち、専門家のコンサルティングを受けたことのない企業のリスクが高くなっている理由は、給料計算というのは、実はとても難しい業務です。
例えば賃金の割増率一つとっても法律で最低基準が決まっており、割増賃金計算基礎の計算方法も純粋な基本給のみから出せばいいというわけでなく、定額の手当を支給しているのならば、そちらも含めなければならないとされています。
つまり専門家のコンサルティングを受けていないと、どうしても法律で定められた額より少ない額を支払ってしまいがちです。
これも積み重ねると未払い賃金を積み重ねてしまう可能性があります。
仮にここで給料については従業員さんと合意のうえで決めて支払っているわけだから、問題ないのではないかと思う方もいると思います。
しかし、給料計算に関係する労働基準法というのは強行規定と最低基準という特徴があります。
これはつまりどういうことかというと、当事者の意思に左右されずに強制的に適用される最低基準規定ということです。
なので、当事者間の合意があっても、労働基準法より低い基準を定めるは禁止されているということです。
なので、労働基準法以下の基準を定めていると、後々突っ込まれるリスクが抱えてしまうということです。
そして3つ目の固定残業代制度・みなし労働制等を導入している企業のリスクが高くなる理由は、一言でいうとキチンとした運用がなされていない場合がほとんどだからです。
こちらについての詳細な説明は時間がかかってしまうので、この動画では掘り下げませんが、どうしてもこの制度は事業主にとって有利に使ってしまう傾向があるので、ここ最近の裁判などで重いペナルティを食らってしまうケースが非常に多くなっています。
なので、固定残業代制度・みなし労働制等を導入している企業様は一度専門家のコンサルティングを受けることを強くおすすめしています。
以上の3つが、未払い賃金のリスクが高くなっている企業の特徴となります。

未払い賃金のリスク解説は以上となります。
最後まで当記事をお読みいただきありがとうございます。